六ツ角研究室(ムツラボ)

ムツカドあたりから流れる音楽のごときニュアンスを

黒糖焼酎とモトローラ

帰宅して一息
ソファに沈み、缶ビールをあけた

月末から月初にまたがる夜。


書き癖がつくと、どんな角度からでも
どんなツールからでも
書かないとなんとなしに気持ちが悪いので

ノートPCをひざの上に乗せて
二日前くらいのことを思い出して書く

そういうのもちょっと新鮮です。



その夜は、最終バスを逃したので

徒歩で西通りを抜けて国体道路をぶらついて帰ることにした。

今泉辺りで「アフター・ザ・レイン」のサインが目に入ったので

ちょっとだけ、あと一杯だけ飲んでいこうと
柔らかめに飛び込んで
カウンターに座る、知人はこの日いなかった

ビールでもない、カクテルでもない
この店自慢の変り種ハイボールの気分でもない。

メニューに焼酎を見つけた
黒糖焼酎のロックを出してもらい、ちびちび飲むことにした。

カウンター越しに若いバーテンが時々話し相手をしてくれる

深夜のたわいもない話っていいものだね。

話がとぎれ、バーテンは忙しく他のお客さんの注文をさばく

なにしろこのお店はカウンターのほかに
テーブル席が4つくらいある

深夜でも忙しいのだ

比較的若いお客さんも多い、若くないお客さんもそれなりに。

天神のカジュアルなBARといえばここでしょう、みたいな空気。


僕はこの店「アフター・ザ・レイン」と
そのお隣にある「ミルキーウェイ」にはじめて来たのが

20歳とかその辺りなので、

各種背伸びして、かっこつけてほろ苦い思い出が多すぎて

恥ずかしさもいっぱいで

数年ぶりでも

年に数回でも

お店の経営者も、たたずまいも、メニューも変わっても

例えば、ちょっとそわそわしたカップルとか見ると

胸がキュンとくる瞬間がある。


スマホのニュースで

「グーグル、モトローラレノボに売却」という
キャッチが目に留まって

酔いもあいまって

なぜか
20歳とかその辺りのことを思い出してしまったのだ。

モトローラという携帯つくってた会社が

いつの間にかグーグルのものになってて

そのグーグルが、時流にあわせて

中国のレノボに事業売却したっていう

そういう、ただそれだけの現実的なニュースなんですけどね


ちょうど僕が大学生で

福岡と久留米をいったり来たりしながら

ある新しいアルバイトを始めていた頃

そこに、年下の先輩でT君という男の子がいたんです

その彼が、当時は珍しかった携帯を持っていた

それがモトローラ社製で、当時はセルラーのロゴと一緒に

無骨な男らしい黒くて四角い筐体で、実に印象的だった。

そのT君というのが、可愛らしい顔して、背が小さくて

やたら偉そうで、少年ギャングを気取っていて

最初は、なんていやなやつだろう、全く嫌いなタイプだったのに

なぜか妙にウマがあって、意外に心根が優しいやつで

連れてくる女の子が毎回美人で

モトローラの携帯に秘密があるのかと

こちらも無理して携帯をレンタルしてみた
(当時の携帯はレンタルか買取という仕組みだった)

しかし、お金がなかったから
ドコモのドニーチョ(という名称だったと思う)という

土・日と深夜限定の定額サービスで

しかも、残念なことに僕の携帯は

モトローラじゃなかったから
T君のように、美人を口説くことができなかったんですね〜

アホですね。

それにしても、T君はいつも自信に満ちていたんです

あの根拠のない自信が人を引き付けていたんだろうと
推測しておりました。

まぁ、その常に自信満々で美人をはべらかしていた

モトローラ君がですよ

生まれて数年の、グーグル君にやられ

アジアで生まれてのし上がったレノボ君に渡り

次から次へと、この20年で

えらいことになったものだと。

バーテンの話に気のない返事をしながら


T君は元気なのだろうかと

すこし、懐かしい気持ちになったのでした。






1#30

ここ数日、首巻きがいらない陽気でした

おそらくまたこれからぐんと寒くなって、そこから春に向かう。

そういう感じ、身体が覚えている不思議。