六ツ角研究室(ムツラボ)

ムツカドあたりから流れる音楽のごときニュアンスを

スピリッツとしての演歌

土曜日。毎年恒例の「にっぽん演歌の夢祭り」。

平均年齢68歳(いや、もっと高いかもしれない)が一万人規模で集う、究極のエンタメ。

演歌のスターを集結させて、マリンメッセ福岡で昼夜合わせて二万人弱の集客を誇る、このとんでもない企画も今年で9回目。
最初から今まで、出演者から、演出から、流通も集客も、シニアの気持ちやたたずまいからも毎回教えられることが多くて
強烈な印象を残してくれる一日です。

ロックが音楽のジャンルではなく、そのスピリッツを指すように
演歌というものも、日本人のある層にとっては、形のない抱き枕的なものなのかもしれない。
約一万人のおじいおばあの終演後の幸せそうな顔。
後ろの席にいた、推定80歳のおばあさんが「ひろしクンひろしクン」と。
「ひろしクンをこんなに目の前で見られた、冥途のミヤゲだわ」とつぶやくのだ。
五木ひろしの凄さを、それで思いしらされることになる。

藤あや子坂本冬美は個人的に大好きなのであるが、今回の福岡公演では、坂本冬美のみの登場。
ますます艶っぽい感じの夜桜お七を前に、同じく「冥途のミヤゲだ」と思う。

今回一番印象的だったのは「八代亜紀」だ。
生で「舟歌」と「雨の慕情」を聴いた。ド派手な衣装とかすれ声。指先が色っぽい。
彼女が唄い始めると、いきなり空気が変わるんだ、人生の深遠を吐息で見せるみたいな。
わなわなわな、完全に持っていかれた。
八代亜紀は凄い、散財したい(何故かそんな気持ち)。

前川清もやっぱりすごい。直立不動の歌唱スタイルと、間(ま)で笑わせる天才。
基本は演歌歌手ってみなさん、笑いの達人です。しゃべり上手いし一万人を気持ちよく転がしてくれる。
笑いの間に見せる、ふっとしたせつなさみたいなものが、演歌のスピリッツなのか。
こればかりは、歳を重ねて解明するしかない。