六ツ角研究室(ムツラボ)

ムツカドあたりから流れる音楽のごときニュアンスを

街が跳び跳ねだす。ギンギラ太陽s「地上最大の作戦」

キャナルシティ劇場は昨年まで「福岡シティ劇場」と呼ばれていて「劇団四季」の専用劇場だった。
自分ごとで言うなら、大阪をベースにしながら、全国を転々と仕事をする生活を辞め、福岡に戻って、現在に繋がる仕事を始めたのが1997年。ちょうどその頃、キャナルシティが出来たと記憶している。
ギンギラ太陽sが生まれたのも確かその頃だ。
福岡シティ劇場では「キャッツ」も「オペラ座の怪人」も「コーラスライン」も「美女と野獣」も
「ライオンキング」も見た。
感動などと二文字にしてしまうのは恐縮してしまう。“生き方”とか“豊かさ”とかを腹の奥に染みこませてくれたのが四季と福岡シティ劇場の存在。

ギンギラの主宰である大塚ムネト氏が会見で、感動の蓄積されたこの劇場に宿る「魂」について熱く語っていたのだが、そこに強く目を向けるところに彼の眼差しの暖かさがあるなぁと嬉しく思った。
軽く1000キャパを越えるこの劇場で、ギンギラ太陽sを見ることができる時代がくるとは、始まりから終わりまで不思議な気持ちだった。
開場を待つ長い長い列が意味するのは満席の盛況と、地元劇団がこの劇場の次の歴史を創る瞬間。明らかにミュージカルファンとは違う幅広い世代と顔、男性がこんなにたくさん芝居を見に来るなんて!
劇場に入る、お約束通り、バス軍団(今回は地下鉄軍団もいた?)が客席を駆け巡り、開演前の写真撮影タイム。
広い劇場の二階にも、バスは登る。客席の顔が笑いに変わり、テンションが上がったところで舞台が始まるのだ。

今回の演目は「地下鉄軍団大逆襲−2011年最新改訂版−“地上最大の作戦”」。
九州新幹線が全線開業するのに伴う、博多駅の新駅ビル開業。福岡の街は、天神という中心地の賑わいから、にわかに博多駅ビルに開業する「阪急」や「東急ハンズ」の話題で持ちきりだ。
このタイミングで「流通」と「交通」を描くタイムリーすぎる作品を持ってきた。
先日、地下鉄3号線のキャナルシティ経由ルートでの博多駅接続が、新市長により決断された。
現実が作品に引っ張られたような発表に街とギンギラファンは歓喜したのです。
やはり今回の作品も、大人の事情を実にするどく笑いに変え、デフォルメし、モノに語らせていた。
ギンギラのことを書くと「ヤナセさんは“褒め過ぎ”」と言われる。
感情を揺さぶられるから
クールになれない。
見慣れた風景が動きだすからか、役者が実に味わい深い芝居をするからか。
自分の感情が揺れていることに驚く。
涙がつつつと伝う、次には笑いがくる、起伏がある、疲れるんだ。
左隣の初老の男性が泣いていた、大粒で泣いて笑っていた。それがこの劇団の凄さ。