六ツ角研究室(ムツラボ)

ムツカドあたりから流れる音楽のごときニュアンスを

見えざる囲い

”気の遠くなるような、異界へ連れて行かれそうな“蝉の声”。 
声=音は見えるものではないけれど、感じられることがある。人の声にも色彩があるように、蝉の合唱にもいちいち表情があって、周波数みたいなものがマッチしてしまうと、ぱっくり別の世界の闔を開けてしまうイメージがある。 
異界は何層にも別れてそばにある、ある特殊な条件が揃わないと見えない、そんな感じ。 
もちろんこれは季節が夏のお盆近くであること、僕が日本人であることと無関係ではないんでしょうね。 
 
 
大洋メディアホールで映画「ジョン・レノン,ニューヨーク」の業務試写を見た。 
31年前の今頃、1980年8月、ニューヨークのヒット・ファクトリーで「ダブル・ファンタジー」のレコーディングを始めるジョンはとてもゴキゲンで見ている方も身を乗り出してしまう導入部、 
ここにたどり着くまでに波瀾万丈のドラマがあるのだが、音楽から離れた時期でさえやはり彼の場合はいつもそこに音楽的要素がある。 
オノ・ヨーコとの蜜月と別離、再会や、アイデンティティの問題や 
あれやこれやあるのだけど、たまらなく刺激的な音楽の神様に選ばれた音楽の記録映画として僕には実に感動的だった。

http://www.youtube.com/watch?v=dHwGpFmLgRI&feature=player_embedded#at=11  
全国的に短期間でのホール上映なんですね。福岡では西鉄ホールにて9/18(日)21(水)の4日間限定上映。 
。 
映像の中のジョン・レノンが、40歳になった自分を、自然に受け入れることができた心境を語る場面が出てくる。 
若い世代に向けてではなく、同世代に向けて唄いたいというようなことを言う、肩の力が抜けて、新しく美しい音楽が生まれる萌芽が見えて、とてもいいなと感じた。 
 
 
安西水丸が1989年頃に書いたコラムに「時間に空間を作る、その空間であれこれ遊ぶ」という表現が出てくる。 
40歳までは自分なりに“見えざる囲い”のようなものを作り、その年齢を過ぎた辺りから囲いをとっぱらい、ゴールした水泳選手のように流してみようと思った・・・とある。 
 
そこから彼らの新しい展開が広がる(ジョンの場合はご存知の結末ではあるが・・・) 
 
あと一年で40歳になる今の僕の心境が、見るものや読むものや人や出来事を興味深くさせるのだ、うん。