六ツ角研究室(ムツラボ)

ムツカドあたりから流れる音楽のごときニュアンスを

妖怪とスイーツの球筋

その老夫婦の中では、梁瀬さんは重度のスイーツ男子だという認識なので、打ち合わせに訪問するたびに、はじめて食する味のケーキ的な物が出てくる。
なぜそうなったのかは思い出せないが、老夫婦が繰り出す渾身のスイーツを、一口食し、にっこり笑い、「この味は○○とはまた違って、生クリームに○○ぽいテンポが感じられますね」と、毎度わけのわからない感想を言い放つのが儀式のようになっている。このキャッチボール的な儀式が手強い
毎度の儀式はむしろ戦い的な趣も出てきた今日この頃。老夫婦の奥さんの、目の奥に宿る光の加減が最新の梁瀬を値踏みしているようにも思える。
それにしても軽度のスイーツ男子であるのは事実なのでこの打ち合わせは毎度楽しく嬉しい。
スイーツだけではない。その打ち合わせ(新しいイベントの具体化と抽象化)の隙間にある、力を抜いた対話のようなものが自分にとって味わい深い。
前日、たまたまある女性歌手と会ったのだ。ユニークな存在感、癖のある動き、独自性、歌い手のあれよりも人間として興味深い人だ。
この女性歌手Yさんは、老夫婦の企てる演奏会にも昔から絡んでいることもあり、ふと力を抜いた瞬間、そういえば的な間(マ)でその話題を投げる、やや速めのスピードで。
老夫婦は変化球で返してくる。儀式のスイーツにも劣らない、見たことのない変化球。「なんだその人物を捉える視点、見方、そんなんありなのか」(心の中でつぶやく、動揺する)。スピードはないのでその変化の軌跡を見極めようとするが、この海千山千の老夫婦、そんなに簡単ではないのだ。
しかも素人を装いながら、玄人な成分がちょいちょい入っている。

たぶん妖怪、老夫婦の皮をかぶった、スイーツと音楽の妖怪。
まだまだ足元にも及ばない、いずれは、そのうち。